備忘録

マンガとFGOと坂

舞台あさひなぐの感想

 おぼえがき

 

プロット単位のはなし

・東島旭の起承転結

「一堂寧々なんてぶっ倒してやりますから!」がなくなってたおかげで旭の物語目標が縮まって、プロットが舞台の尺にぴったりになっててよかったというはなし。ただそこをなくしたときの冬合宿までの東島旭の物語の起承転結はどうなるのかなって考えたときに、「私でもあんな風に強くなれますか」→「あなたは私の憧れです。だから真春先輩に勝ちたい」をテーマにしたいけど、「上段の君」のくだりが全カットされてるから上滑りなのでその分「真春先輩が負けた相手に勝つことで間接的に真春先輩をこえる」というお話になってる印象。「一堂寧々なんてぶっ倒してやりますから!」をカットすることで、本来の「東島旭vs一同寧々」っていう対立軸から、「一堂寧々vs宮路真春(東島旭)」という構図になってここで話を切ってもしまりがいい感じになってる。ってそう考えると、円陣稽古(まあ舞台では円陣稽古って単語は出てこなかったけど)のときに真春先輩が旭に一堂寧々を重ねてた描写が原作になかったのに追加されてたことにも納得がいく。あれはつまり一堂寧々vs宮路真春って構図を原作よりも強調してるんですね。ところで原作になかった追加描写といえば、女は度胸のシーンに差し込まれた「勇気」って単語も最終的に利いてきたのでうまいなあという感じでした。合宿での練習シーンもそんなに多くなかったので、原作通りにやったら旭の深い踏み込み習得シーンにいまいち上滑り感が出るはずなんだけど、その分真春先輩が最初に教えた「勇気」を旭が手に入れて、それが旭の何よりの強みだって説明をすることでその分を補填してたんだなあって気づいたときには、本来途中でぶつぎりになっているはずのプロットを舞台版に縮めるのには色々工夫がされてるもんだなあと感心した。そうすることによって、旭が天才じゃなくて努力で手に入れた確かなものだっていう台詞を原作通り将子じゃなくて、その勇気を教えた真春先輩が言うっていう意味も出てくる。なるほどね~。

 

・将子のはなし

まあ旭が天才じゃなくてそれだけの努力をしてきたんすって将子が言うことの理由の一つは、そのあとの部内対抗戦で旭vs将子をやるための前フリって意味もあったはずなんだけど当然舞台ではそれがないので真春先輩の台詞になった。そのかわりといっちゃなんだけど、本来ない描写の将子が自分の弱さを認めるシーンが挟まれたのは良い演出だったと思う。

 

・一堂寧々のはなし

接着剤買いにいったときの「コートの中に持っていけるのは自分の心と身体だけ」ってくだり、原作になかったな~と思ってたけどいま確認したらあった。記憶力がガバガバ。でもまあ、あの台詞が延長戦での東島旭覚醒の前フリになってるんだから当然といえば当然か。一堂寧々は「コートの中に持っていけるのは自分の心と身体だけ(だから他人となれ合うことは強さにはつながらない)」→「そぎ落とした分コートの中は自分が強くあらないといけない場所」という哲学だったのに対して、東島旭は「コートの中に持っていけるのは自分の心と身体だけ(だから弱さすらもコートの外に置いていける)」→「置いていった分だけコートの中は自分が強くなれる場所(と気付けたから、「薙刀が好きです」につながる)」という哲学で、漫画21巻の東島旭vs一堂寧々が構成されている。そう考えたら舞台版で旭が(不意をついたであろうとはいえ)一堂寧々から一本をとったのも、そうおかしい描写でもないな~と思えてしまった。実力の試合ではなく哲学のぶつかりあいという描写だし。もっともここまできたら完全に原作読んだうえでの脳内補完なんだけども。

 

演技のはなし

齋藤飛鳥/東島旭

最初喋り出したとき飛鳥ちゃんはちょっと野暮ったくなっても可愛いな~~とか思ってたんだけど後半あたりから東島旭が動いてる……!!!!!!という印象になったのですごいぜ。

 

・八十村将子/井上小百合

今回一番すごかったと思う。声もどすがきいててめちゃめちゃ格好良かったし、あとがさつで乱暴な感じの一挙手一投足がいちいち将子っぽかった。本人も最後の挨拶で話してないところでも将子らしさをだせるように頑張ったって言ってたので納得。すごい。本人の人柄にあってるってとこもあるんだろうけど。こっちは旭と違って最初から最後まで井上小百合らしさが全くなかったし、声すらも完全に八十村将子だったのでこれは井上小百合ではなく本物の八十村将子なのではないか……?と思ってたけど最後の挨拶で井上小百合の声だったからなんか安心した。

 

・一堂寧々/堀未央奈

レコメンで堀ちゃんじゃないみたい~って言ってたけどマジでその通りでびっくりした。福岡弁が様になってるしめちゃめちゃ強キャラ感があったし叫ぶシーンも迫力があった。将子役井上は見る前からハマり役感があったけど、こっちは見た目は堀未央奈なのに話しだしたら一堂寧々だったのでこれもまたこれですごいなという感じ。あと寧々に旭がビンタしたあたりでこの二人であの一堂寧々vs東島旭をやるんだなあ……と想像して勝手にエモくなってた。病気。

 

・的林つぐみ/北野日奈子

特に出番もなかったし、声を出したら北野日奈子ちゃんなので超絶可愛いな~と公演中は思ってるだけだった。ただ、「エース並みの実力があるのに熊本から一堂寧々がきたせいで二番手に甘んじている的林つぐみ」と二期生の中での北野日奈子の立ち位置っていうのを勝手に重ね合わせてエモくなるのはオタクの勝手な妄想だよな~~~~と思ってたのに、最後の挨拶で北野日奈子ちゃんがちょっと自分と通じるところがあるから……って言いだした時点でわけがわからないくらいエモくなってしまったし、正直あの瞬間が今日のMVPでも差し支えないレベル。20巻収録221本目「エースではない二人」なんだよな……。

 

・そのほか

先生がいい緊張の弛緩剤になってた。寒河江/衛藤はあれで髪切るところまでいったらそれはそれですごいいい味のキャラクターになってくれるんだろうな~。そんなとこ。